第二章 作戦

 

「高城班長!」

そう叫びながら、カイトは後部格納庫へ続く扉を開ける。

彼が、格納庫に飛び込むと一人の初老の男性が立っていた。

「待っておったぞ!カイト」

カイトが目の前に来ると男性は一言そう言った。

高城為行少佐。ナデシコAで整備班長を務めている。

ガッチリとした筋肉質の体格に180センチメートルもある高身長。厳格な性格の持ち主であり、自分の腕にプライドを持っている。

その技術などは、まさしく天才と呼ぶに相応しい出来栄えである。

そんな性格の故か、以前にいた艦ではパイロットが整備不良を訴えたため大喧嘩が勃発。そのパイロットを病院送りにした。

その後、辞職がささやかれる中、彼は英雄―ナデシコA―に移動となった。

彼の天才的な腕は、上層部を含め誰もが知っている。上層部は、彼の腕が無くなるのを防ぐためにナデシコAに左遷という形を取り栄転させた。

「準備はできておる。行ってこい」

「わかりました」

 

 

「さて、ここが正念場だ!」

 

 

「全システム、オール・グリーン。スーパーエステバリス起動」

『スーパーエステバリス・カイト機カタパルトへ移動します』

機動戦艦ナデシコA格納庫で流れる声は、ラピス・ラズリ・テンカワ少尉。

エステバリスが鎮座するエレベーターが動き始め、カタパルトに移動を始める。

『カイト』

エステバリスのコクピット内にアキトが映ったウィンドウが現れた。

『いいか、まずは本艦隊から遠ざけるように心がけてくれ』

「わかりました」

『これ以上の被害は出したくない。それと敵の強さは未知数だ。深追いだけはするなよ』

「了解です。地球に帰りを待っている人もいますしね」

『そうだな』

そう言って通信は切れた。

入れ替わりに『カタパルトへの接続完了』と【アキツシヒメ】のマークがコクピットと艦橋に表示される。

ちなみに【アキツシヒメ】とは、ネルガル重工が開発したオモイカネシステムである。

名前の由来は、日本神話に登場する神・ヨロズハタトヨアキツシヒメノミコトから。

元々ナデシコAに搭載されていたオモイカネは、ナデシコC就航に伴い同艦に移動された。

ナデシコCの艦長が、ホシノ・ルリ少佐であり、オモイカネとの信頼が一番厚いという配慮からである。

 

 

「本艦は、これより敵機の迎撃に移る。反転180度後にカイト機は出撃。敵機を我が艦隊から遠ざけてもらいたい。

その後、本艦は、カイト機の援護にまわる」

艦長席でアキトは命令を伝えていく。

「各艦は、被害艦船を中央に密集体型で前進しつつ護衛せよ」

ナデシコは、いわゆる殿になるのだ。

元々は、艦隊旗艦のやるべき仕事ではない。

だが、アキトには一つの引っかかりが頭にあった。

 

 

Unknownの目的は、【ナデシコA】ではないかと。

 

 

Unknownは、完全な奇襲攻撃だった。

後方に位置した艦船なら簡単に撃沈できたはずだ。

だが、それをしなかった。

それに妨害電波をだして、こちらの通信を麻痺させている。

援軍を呼ばせないようにし、こちらの力を純粋に計っているようだ。

これら意外にも不審な点はいくつか感じていた。

それらを踏まえて、アキトはUnknownの目的は、【ナデシコA】ではないかと考えていた。

次回 「第三章 戦闘」

愛は いつも そこに・・・・


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